読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

通勤快読ブックレビュー

電車の中で読む本はないかとお探しのあなたに。新旧とりまぜて。

グラスホッパー 【伊坂幸太郎】 (2004)

 

【あらすじ】

妻をひき逃げした男に復讐するために、裏社会でその男の父親が経営する会社に入社した鈴木。だが、その男は目の前で車に轢かれてしまった。裏の業界には「押し屋」と呼ばれる殺し屋がいるという。命じられるままに「押し屋」を追った鈴木だったが、待っていたのは、妻と幼い息子のいる温かい家庭だった。

一方、自殺専門の殺し屋「鯨」は過去を清算するために、ナイフ使いの殺し屋「蝉」は手柄を立てるために「押し屋」を探していた。

鈴木、「鯨」、「蝉」、「押し屋」の4人の運命が交錯するその時・・・。

【感想など】

人間は誰でも心に闇を抱えて生きているものだと思うのですが、この作品の登場人物の心の闇はハンパないです。「鯨」「蝉」「押し屋」は殺し屋なので、その闇の深さの当然なところがあるのですが、唯一の一般市民の鈴木にしても、とんでもない闇を抱えています。交わることのなかった四つの闇が、ある事件をきっかけにしてだんだんとその距離を縮め、やがては交錯していく、その過程は非常にスリリングであり、読む者の心をガッチリ捕らえて離しません。

闇と闇が交錯しても、より一層深い闇になるだけで、決して光にはなるはずがありません。なので、ストーリー全編に渡ってトーン暗めで、当然のことながらハッピーエンドなんて期待してはいけません。闇と闇が交錯して、より深い闇になって、そのまま、暗澹たる思いのまま、終わっていきます。が、ラストシーンで、鈴木にだけは、ほんのわずかな光が射します。詳しくは書きませんが、そのシーンだけでストーリー全体がほんの少し、救われたような思いです。

殺し屋の話なので、随所に殺しのシーンがあります。しかし、作者は敢えてスプラッター的な、猟奇的な描写にはしていないのでは、と思います。むしろ、部品がひとつひとつ取れて物が壊れていくような淡々とした描写で、儚さ、脆さといった印象を心に残すのですが、それがまた一層「殺し屋」の闇の深さを浮き彫りにしているような気がします。

感情移入するにもなかなか難しいキャラクター設定ですが、一般市民・鈴木の立場で読んでみると面白いと思います。

ハッピーにはなれないかも知れませんが、読み応えはバッチリです。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

2015年に映画化されています。キャストは、主人公・鈴木に生田斗真さん、「鯨」に浅野忠信さん、「蝉」に山田涼介さん、「押し屋」に吉岡秀隆さん、という配役です。

この配役はドンピシャですね。かなり小説のイメージに近いと思います。「蝉」役の山田涼介さんは、今までドラマでは「金田一少年の事件簿」くらいしか知らなかったので、冷徹な殺し屋役にはちょっと驚きましたが、見事にハマってましたね。

終盤以降が小説とやや異なっていますが、違和感はなかったです。ぜひ映画のほうもご覧いただきたいですね。