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通勤快読ブックレビュー

電車の中で読む本はないかとお探しのあなたに。新旧とりまぜて。

テロリストのパラソル 【藤原伊織】 (1995)

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【あらすじ】

アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を探すことになった島村が見た真実とは・・・?

史上初の江戸川乱歩賞直木賞W受賞作。

【感想など】

2007年に若くして逝去された藤原伊織氏のデビュー2作目になります。

さすがに乱歩賞&直木賞の受賞作品で、物語の世界にぐいぐい引き込まれ、一気に読み進んでしまいます。

何と言っても、登場人物のキャラクターが魅力的ですね。主人公の島村からして、アル中で隠遁の身、ということは、一体過去に何があったんだ?と興味を引かれるところです。アル中の割には身のこなしが軽く、ますます経歴の謎が深まります。途中の独白部分で隠遁の理由も明確になるのですが、どうしようもない、救いようのない闇の深さ・・・過去が現代の事件とどう関係して、どう結末をつけるつもりなのか、という疑問の答えが非常に気になり、どんどん引きずり込まれていきます。

そしてヤクザの浅井。非常に頭がキレて、かつ人情に厚い。最初の、敵か味方かわからない微妙な距離感も興味深いのですが、結局は最後まで島村と行動を共にすることになります。彼のような人間が常に自分を見守る位置にいてくれるということは、どんなに心強いことでしょう。

続いて昔の恋人の娘・塔子。男勝りで口が悪いのですが、その行動力が島村の大きな助けになります。男と女としての距離が物語の中でどのように変化していくのかが気になるところです。

その他の登場人物も含めて、共通しているのは、皆が心の中に闇を抱えている、ということでしょうか。その闇の部分が、物語の進行に従ってどのように変化して、どのように共鳴していくのか、と考えながら読んでいくのも面白いと思います。

犯人が途中である程度想像できてしまうので、犯人探しという点では物足りないかも知れませんが、それを差し引いても、事件発生からの展開がダイナミック、かつスリリングで目が離せません。

いろいろな書評を読むと、展開がご都合主義すぎるという辛口の批判もありますが、そんなことはないです。物語として読者を惹きつける力は一級品です。

ぜひ読んでみていただきたい作品です。

【評価】

★★★★★

【映像化】

1996年にTVの2時間ドラマで放映され、その時のキャストは、主人公の島村圭介=萩原健一さん、ヤクザの浅井=大杉漣さん、塔子=木村佳乃さんでした。

ぜひもう一度、映像化してもらえるのであれば、キャストは、島村圭介=佐藤浩市さん、ヤクザの浅井=北村一輝さん、塔子=長澤まさみさん、というのはいかがでしょうか。

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