読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

通勤快読ブックレビュー

電車の中で読む本はないかとお探しのあなたに。新旧とりまぜて。

高千穂伝説殺人事件 【内田康夫】 (1987)

 

f:id:ogihara0308:20170324020108j:plain

【あらすじ】

バイオリニスト・千恵子の父・本沢が、留守番電話に「ブツはニュータバルからタカチホへ。運んだのはノベウン。受け取ったのは市川」という謎の言葉を残して失踪した。その後、父の知り合いと称する男が、高千穂で不審な死を遂げた。そしてまた、新たな殺人が・・・。千恵子は浅見光彦とともに、神話と伝説の国・高千穂に向かう。

【感想など】

内田康夫氏が病気のため休筆する、というニュースが飛び込んで来ました。浅見光彦シリーズの愛読者としては、何か書くべし、と思い、この本を取り上げました。

まだ浅見光彦シリーズを読んでいない方のために、少し紹介させていただきたいと思います。

浅見光彦シリーズは、1985年の「後鳥羽伝説殺人事件」から始まり、もう100を超える作品が執筆されています。なぜ、ここまで長きに渡って愛読され続けているのでしょうか。

まずは、何と言っても、「浅見光彦」のキャラクターが愛されているからだと思います。33歳独身で、三流私立大を卒業、職業は(会社勤めに挫折した結果)フリーのルポライター。ルックスは悪くなく、事件を通して女性と知り合うチャンスは多いものの、奥手で典型的な草食男子であるが故に、未だに生涯の伴侶を射止めることができず、兄・浅見陽一郎(警察庁刑事局長)の家に居候の身です。この、社会的に決して勝ち組とは言えない主人公が、ひとたび殺人事件となると、抜群の推理力で解決に導くところに、ある種の爽快感が感じられるのだと思います。

次に挙げるべきは、内田康夫氏の執筆ポリシーと言うか、「こだわり」ですね。基本的には殺人事件を扱う推理小説ながら、血なまぐさい描写は一切ありません。犯人像についても、凶悪な殺人鬼は絶対に出てこず、犯人の論理として、命を懸けてでも守るべきものを守るために、やむにやまれず殺人に手を染めてしまった、というものです。浅見光彦も、正義を行うために犯人を追求してはいくのですが、警察に突き出す訳でもなく、厳しく断罪する訳でもなく、最終的には犯人の良心に全てを委ねるというスタンスです。推理小説としては、非常にライトな読み物と言えるかも知れませんが、ダイイング・メッセージあり、アリバイ崩しあり、と、基本部分は押さえていますので、もちろん、推理の楽しみも充分にあります。

付け加えるとすれば、「旅情ミステリー」というジャンルからもわかるように、ほとんどの作品が日本各地の名所、旧跡、伝説などをモチーフにしていますので、そちらからのアプローチを持って読み進めるのも、非常に楽しいと思います。

内田康夫氏には、ぜひ体調を良くしていただいて、これからももっと「浅見光彦シリーズ」を世に送り出していただきたいですね。

※「高千穂伝説殺人事件」は、たまたま手元にあっただけで、シリーズの中でこれがイチオシ!という訳ではありませんので、ご了承ください。

【評価】

★★★★★

【映像化】

浅見光彦シリーズ」は、各TV局で90以上の作品がドラマ化されています(重複あり)。浅見光彦は、国広富之さん、篠田三郎さん、水谷豊さん、榎木孝明さん、辰巳琢郎さん、沢村一樹さん、高嶋政伸さん、中村俊介さん、速水もこみちさんといった俳優の方々が演じられています。

(ちなみに、内田康夫氏のイメージでは、榎木孝明さんが一番しっくりくるそうですね。私的には、中村俊介さんです。)

天河伝説殺人事件」は、1991年に主演:榎木孝明さんで映画化されています。

読んでみたいと思ったら、こちらをクリック!