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通勤快読ブックレビュー

電車の中で読む本はないかとお探しのあなたに。新旧とりまぜて。

エチュード 【今野敏】 (2010)

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【あらすじ】

渋谷、新宿で発生した連続通り魔殺人事件。なぜか誤認逮捕が繰り返される事態について、警視庁より送り込まれた心理調査官・藤森紗英は、巧妙な「犯人すり替え」トリックが潜んでいることを指摘する。警部補・碓氷弘一は、藤森紗英とともに捜査を行うが、真犯人を探し出して新たな犯行を食い止めることができるのか・・・?

【感想など】

今野敏氏の警部補・碓氷弘一を主人公とした作品はシリーズもの(この作品が第四作)になっているのですが、常に普通とは言えない事件が発生していて、碓氷は毎回違った専門家とコンビを組まされて、事件解決に挑んでいきます。

この作品では、渋谷、新宿で連続通り魔事件が発生するのですが、どちらの事件も、「こいつが犯人だ!」という声を聞いて警察官が犯人を取り押さえるものの、犯人は犯行を全否定、じゃあ、誰が「こいつが犯人だ!」と言ったんだ?というと、誰もその人相、風体を覚えていない・・・という奇妙な事態が起こります。そんな状況を打破すべく、警視庁から心理調査官・藤森が参上し、事件の状況から犯人の心理を分析し、どのようなトリックで「犯人すり替え」が行われたのか、次にまた事件は起こるのか、犯行の動機は何なのか・・・などの問題をひとつずつ解明して行き、真犯人に迫る、というストーリーになっています。

この「犯人すり替え」のトリックは非常に面白いですね。現実的にそんな犯行が可能なのか、というと、ちょっと疑問符がつきますが、物語としては非常に面白い設定だと思います。

心理調査官・藤森のキャラクター設定もよく考えられています。自信満々というタイプではなく、常に「これでいいのだろうか」と疑問を持ちながらも、警部補・碓氷に支えられながら、理詰めで犯人像を絞り込んでいくあたりは、なかなか読み応えがあります。

途中、藤森と真犯人(とは気づいていなかったが)が対峙するシーンがあるのですが、この作品のクライマックスと呼んでもいいかもしれない、超重要シーンです。藤森の、真犯人であるかないかの手がかりを少しでも引き出そうとする問いかけに対して、警察に挑み、常に警察の先を行こうとする犯人が周到に計算された答えを返す、という、水面下での心理戦が緊迫感イッパイでドキドキしてしまいます。

中だるみもなく、飽きずに一気に読み進めることができる、良質の警察小説だと思います。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

警部補・碓氷と心理調査官・藤森は誰がいいかなーとか思っていたら、つい先日(4/9)、2時間ドラマで放映されていたようですね。見逃してしまった・・・

その時の配役は、警部補・碓氷=ユースケ・サンタマリアさん、心理調査官・藤森=相武紗季さんでした。

私が考えていた配役は、碓氷=伊原剛志さん、藤森=吉岡里帆さんでした。

皆さんのイメージでは、どちらでしょうか?

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テロリストのパラソル 【藤原伊織】 (1995)

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【あらすじ】

アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を探すことになった島村が見た真実とは・・・?

史上初の江戸川乱歩賞直木賞W受賞作。

【感想など】

2007年に若くして逝去された藤原伊織氏のデビュー2作目になります。

さすがに乱歩賞&直木賞の受賞作品で、物語の世界にぐいぐい引き込まれ、一気に読み進んでしまいます。

何と言っても、登場人物のキャラクターが魅力的ですね。主人公の島村からして、アル中で隠遁の身、ということは、一体過去に何があったんだ?と興味を引かれるところです。アル中の割には身のこなしが軽く、ますます経歴の謎が深まります。途中の独白部分で隠遁の理由も明確になるのですが、どうしようもない、救いようのない闇の深さ・・・過去が現代の事件とどう関係して、どう結末をつけるつもりなのか、という疑問の答えが非常に気になり、どんどん引きずり込まれていきます。

そしてヤクザの浅井。非常に頭がキレて、かつ人情に厚い。最初の、敵か味方かわからない微妙な距離感も興味深いのですが、結局は最後まで島村と行動を共にすることになります。彼のような人間が常に自分を見守る位置にいてくれるということは、どんなに心強いことでしょう。

続いて昔の恋人の娘・塔子。男勝りで口が悪いのですが、その行動力が島村の大きな助けになります。男と女としての距離が物語の中でどのように変化していくのかが気になるところです。

その他の登場人物も含めて、共通しているのは、皆が心の中に闇を抱えている、ということでしょうか。その闇の部分が、物語の進行に従ってどのように変化して、どのように共鳴していくのか、と考えながら読んでいくのも面白いと思います。

犯人が途中である程度想像できてしまうので、犯人探しという点では物足りないかも知れませんが、それを差し引いても、事件発生からの展開がダイナミック、かつスリリングで目が離せません。

いろいろな書評を読むと、展開がご都合主義すぎるという辛口の批判もありますが、そんなことはないです。物語として読者を惹きつける力は一級品です。

ぜひ読んでみていただきたい作品です。

【評価】

★★★★★

【映像化】

1996年にTVの2時間ドラマで放映され、その時のキャストは、主人公の島村圭介=萩原健一さん、ヤクザの浅井=大杉漣さん、塔子=木村佳乃さんでした。

ぜひもう一度、映像化してもらえるのであれば、キャストは、島村圭介=佐藤浩市さん、ヤクザの浅井=北村一輝さん、塔子=長澤まさみさん、というのはいかがでしょうか。

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クラインの壺 【岡嶋二人】 (1989)

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【あらすじ】

ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャル・リアリティ・システムの制作に関わることになった青年・上杉。アルバイト募集を見てやってきた少女・高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになった。ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は・・・?上杉と高石はどうなってしまうのか・・・?

【感想など】

この作品は、岡嶋二人氏(井上泉氏と徳山諄一氏によるコンビのペンネーム)の約20本の長編小説の中でも最高傑作だと思います。

現実とヴァーチャル・リアリティの世界を行き来しているうちに、どちら本当の現実世界なのかがわからなくなってしまった主人公の上杉青年。高石梨紗が存在する世界が現実なのか、それとも、高石梨紗の存在そのものがヴァーチャル・リアリティの世界の中でのことなのか・・・最終的には、自らの命を絶つことでしか、それを判断することができなくなってしまいます。ヴァーチャル・リアリティの世界であれば、それでゲーム・オーバーだけど、最初からもう一度やり直せばいいだけの話、でも、もし現実世界だったら・・・

この作品の面白い(というか恐ろしい)ところは、それが小説の中でのお話、という訳では決してなくて、現代のIT(インフォメーション・テクノロジー)の急激な発展を考えると、いつ本当に起きてもおかしくはない、ということを読後に強烈に実感させられるところです。

ヴァーチャル・リアリティのゲーム機が世に出始めたのは、ここ数年のことですよね。まだ実際にそれをプレイしたことはないのですが、近い将来、ITの発展によって、本当に現実との区別ができないほどのゲーム機が開発されたら・・・?

そう考えると、ゾーっとしてきますね・・・。

それにしても、30年も前にこのような発想の小説が書けてしまう岡嶋二人先生、スゴすぎます!

【評価】

★★★★★

【映像化】

1996年にNHK教育テレビのジュニアドラマとして、主演の上杉彰彦を国分博さん(当時ジャニーズJr.)、ヒロインの高石梨紗を中山忍さんで全10話構成で放映されていたようです。知らなかったなー。もう一度、新たなキャストで映像化してほしいですね。破滅に導かれていく悲劇の主人公は、抜群の演技力が光る神木隆之介さんにぜひ演じていただきたいです。純粋で一途なヒロイン役は、黒島結菜さんにぜひお願いしたいです。

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キウイγ(ガンマ)は時計仕掛け 【森博嗣】 (2013)

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【あらすじ】

建築学会が開催される大学に、「γ(ガンマ)」の文字が刻まれたキウイがひとつ届けられた。銀のプルトップが差し込まれており、あたかも手榴弾を模したようなそれは、誰がなぜ送ってきたのか。

その夜、同じくキウイを持った男に学長が射殺される。そして犯人を絞り込む間もなく、第二の殺人が起きる。犀川創平、西之園萌絵はこの事件の謎が解けるのだろうか・・・

【感想など】

この作品は、森博嗣氏の「Gシリーズ」と呼ばれる一連の作品の中の一作です。氏は、他にも「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」「四季シリーズ」などのシリーズものを執筆しており、実に多作な作家として知られています。

シリーズものということで、この一冊だけの評価というのが非常に難しいですね。登場人物の人となりが他の作品で語られていたり、事件の伏線の種明かしが他の作品で行われていたり、と、他の作品を知らない方が突然この一冊を読んでも、「はあ?」で終わってしまうことでしょう。

森博嗣氏は工学の博士号を取得しているバリバリの理系人間で、その作風も独特の味があります。情緒的なくどい言い回し過多の表現に縛られることなく、簡潔でスッキリとした文章で、非常に読みやすいのが特徴と言えるでしょう。

キャラクターも非常に魅力的です。特に、この作品にも登場しますが、多くの作品に探偵役で登場する、N大学教授の犀川創平、N大学建築学科の学生(後に准教授になる)の西之園萌絵の二人の佇まいというか空気感が独特で、作品全体の(殺人という事件が題材でありながらも)柔らかい、穏やかな雰囲気作りに欠かせないキャラクターとなっています。

森博嗣ワールドを体感してみようという方は、ぜひ「S&Mシリース」から読み進めてみてください。きっとハマってしまうこと間違いなしです。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

「S&Mシリーズ」の「すべてがFになる」が、2014年にTV連続ドラマで放映されました(同シリーズの他の作品も含めて)。キャストは、犀川創平=綾野剛さん、西之園萌絵武井咲さんでした。なかなかいい配役だったのではないでしょうか。特に、武井咲さんのフワッとした感じ、清潔感が西之園萌絵にピッタリでしたね。

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藁の楯 【木内一裕】 (2004)

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【あらすじ】

「この男を殺してください。お礼として10億円お支払いします。」

孫娘を犯人・清丸に殺された政財界の大物・蜷川は、犯人の首に懸賞金をかけたのだった。警視庁は清丸を自首先の福岡から東京まで護送するのだが、一般市民だけでなく、警察官、機動隊員までもが懸賞金に目がくらんで清丸をつけ狙う。果たして護送チームは清丸を無事に警視庁まで護送することができるのか・・・。

【感想など】

とても面白くて、一気に最後まで読んでしまいました。

まず、舞台設定が突拍子もないのですが、秀逸ですね。懸賞金をかけられた犯人、そしてその首を狙うのが一般市民だけでなく、警察官、機動隊員といった身内の者まで出る始末。誰が敵なのか、どこに潜んでいるのか、どういう手段で狙ってくるのか、心休まる暇がありません。

そして、人間のクズのような犯人を護送しなければならない警視庁SPの葛藤が、良く伝わってきます。正義を行うために警察官になったのに、仕事とは言え、悪の塊のような犯人をなぜ守らなければいけないのか。時に仲間、同僚に銃を向けてでも任務を遂行しなければいけない、その任務に果たして価値はあるのか・・・

逆に、犯人・清丸の醜悪ぶりが浮き彫りになっています。思い出しても気持ちが悪くなるくらい最低のヤローですが、それだけに、警視庁SPの内面の葛藤がより一層際立ってきます。

読後感は「スッキリ!」とまでは行かず、(テーマがテーマだけに)「うーん、なんだかなー。」という感じではありますが、読み応えのある一冊です。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

2013年に映画化されています。主人公の警視庁SP・銘苅に大沢たかおさん、同じくSP・白岩に松嶋菜々子さん、犯人・清丸に藤原竜也さんという配役です。内面の葛藤を抱えながらも任務を実直に遂行するSP役の大沢たかおさんは、見事にハマってますね。ですが、それにも増して、最低ヤローの犯人役を実に憎々しく演じ切った藤原竜也さんが素晴らしかったです。

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炎都 City Inferno 【柴田よしき】 (2000)

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【あらすじ】

木梨香流は京都の地質調査会社の技師。地下水の水位の急激な低下が、異変の発端だった。一方、京都御苑では奇妙な死体が発見されていた。4時間前まで生きていた男が、全身の液体を抜き取られ、カラカラに干からびている!

ところがそれは、京都中を恐怖と絶望に叩き込んだ未曾有の大厄災のほんの序曲にすぎなかった・・・

【感想など】

昔映画館で見た、「妖怪大戦争」を思い出しました。京都を舞台に、妖怪たちが跳梁跋扈する大パニックサスペンスホラー作品なのですが、妙に親近感が沸くというか、まったくの絵空事ではなく、どこか、本当に起きてしまっても不思議ではないような感じがするのは、やはり日本人としての性(さが)でしょうか。

妖怪たちの所業がちょっとスプラッター的ではありますが、それでもとても面白く読めます。ただの気持ち悪い妖怪物語で終わらなかったのは、南国の守護神ゲッコー(ヤモリ)の登場がストーリーに幅と膨らみを持たせ、終盤での九頭竜、白竜などの絶対的守護者としての竜の登場がストーリーに収束感を持たせているからで、それはイコール、作者・柴田よしき氏の卓越したストーリーテラーとしての才能が成せる技であり、ブレない世界観が見事に作品として昇華しているからなのだと思います。

ヒロインの木梨香流がとても魅力的な女性に描かれてますね。全体的に男性よりも女性が主体的、活動的で頑張っている姿が美しいです。

ご一読をおすすめします。

PS:

続編が何冊か出ていますが、個人的には、風呂敷広げすぎ感がハンパないです・・・

【評価】

★★★★★

【映像化】

まだ映像化はされていません。登場人物がほとんど妖怪ですから、フルCGですかね。実写化するのであれば、ヒロインの木梨香流は松岡茉優さん、ヒロインと恋に落ちる(超重要人物の)真行寺君之は松坂桃李さん、というイメージかなあ・・・

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Sの継承(上/下)【堂場瞬一】 (2013)

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 【あらすじ】

捜査一課特殊班を翻弄する毒ガス事件が発生。現場で発見された白骨死体は、50年の時を超え、過去のクーデター計画へとつながっていた。時空を超えたふたつの事件を繋ぐミッシングリンク「S」とは!?

 【感想など】

この小説には、昭和の時代に起きたクーデター計画、平成の現代で起きた毒ガス事件という二つの事件が描かれており、それぞれの事件がなぜ起きたのか、それぞれの事件を関連づけるものは何なのか、というのが全体を通しての最大のテーマになっています。

それぞれの事件の描写は非常に面白く読めます。昭和の時代、東京五輪の期待高まる世の中の裏側で静かに進行していった クーデター計画。特に、理系大学生の(どちらかと言えば目立たないタイプの)松島が、毒ガスという武器を手に入れたことによって狂気の革命家へと変貌していく様に引き込まれます。そして平成の現代、毒ガスを盾に国会議員総辞職を求めた犯人「S」が、ネットを駆使して世論をコントロールしていく過程、逆にネットを過信し過ぎたが故に計画が破綻していく過程は、手に汗を握ります。

というように、それぞれの事件の描写が非常に読み応えがあって面白いだけに、じゃあ、その二つの事件を結びつけるものは何なの?というところが少々物足りない感じがしました。「え、これだけ大きな事件を起こしておいて、それだけ?」的な・・・

う~ん・・・ 残念!

でも、なかなか面白かったですよ。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

まだ映画、ドラマにはなっていないようです。静かな狂気に満ちた犯人を演じてくれそうな俳優さんがなかなか難しいのですが、ここはひとつ、佐藤健さんにお願いしてみたいですね。

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